信用組合の不法行為と消滅時効(最判平成23年4月22日)

事案の概要

中小企業等協同組合法上の信用協同組合が経営破綻し、同組合の組合員が出資金の払戻しを受けられず、出資勧誘時の説明義務違反による不法行為に基づく損害賠償請求を求めました。これに対し、本件訴訟が提訴されたのが、組合の破綻から6年以上経過後であったため、組合は、消滅時効を援用しました。

 

判旨の概要

組合員が、①組合の債務超過の判明後に出資をしていたこと②出資から破綻まで9月しかなかったこと③出資時に既に組合が債務超過であったことが分かっていたこと④破綻の1年後には当該組合員以外の組合員による集団訴訟が提起されていたことをもとに、遅くとも、集団訴訟が提起された時点から進行する。

 

コメント

本件は、信用組合の出資金に関する最高裁の判断ですが、出資金の払い戻しについては、協同組合についても該当するものと考えられます。協同組合がきちんと運営されている場合には、特に問題となる判例ではありませんが、協同組合の解散・清算といった段階まで来た場合に参考となるものです。

不法行為に基づく損害賠償請求については、3年間の消滅時効(改正前の民法724条前段「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する」)が定められていました(現行民法でもこの3年の消滅時効は変わりません。)。そして、この「知った時」とは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時と解されています。

最高裁は、組合員が、他の組合員が集団訴訟を提起しているのを知っていた以上、遅くとも、その時点までに、自ら損害賠償請求ができたと評価し、その時点からの消滅時効の進行を認め、組合員の請求を認めませんでした。

 

returnTOP写真