団体交渉を申し入れられた場合の初動対応

団体交渉に応じる義務

使用者が、労働組合が申し入れた団体交渉を「正当な理由がなく拒む」ことは不当労働行為として禁止されており(労働組合法7条2号)、団体交渉に応じる義務があります。

そして、団体交渉は、直接面談することにより行われ、合意しない限り、文書によるやりとりや電話などによる協議では、団体交渉とはいえません。

そのため、団体交渉を申し入れられた場合、団体交渉の日時、場所、出席者等について調整する必要がありますが、今回はその調整にあたって考慮すべき点を解説していきます。

 

団体交渉にあたって調整すべき事項

交渉の日時

交渉日時は、労使の合意によって決定する事項です。

団体交渉申し入れの際に、労働組合が日程を挙げることがあるかと思いますが、使用者が準備の都合上その他の理由により、合理的な範囲内で延期を申し入れることは団体交渉拒否にはあたりません。ただ、申し入れ時点から一定期間内の適当な時期に交渉に応じる義務があります。

場所

場所についても、労働組合の要求に拘束されません。

しかし、合理的な理由なく、組合の活動拠点から遠隔地を団体交渉の場所と固執することは正当な理由のない団体交渉拒否となります(中央委命令平成22年3月31日)。

出席者
組合側

労働組合法6条では、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」と規定されています。

「労働組合の代表者」には、組合規約上の対外的な代表権を有している者(委員長)だけでなく、交渉担当者となりうることとされている者も含みます。

「労働組合の委任を受けた者」も団体交渉での交渉権限が認められているため、上部団体の役員、被解雇者等も交渉権限の委任を受けていれば出席できます。そのため、これらの者が出席していることを理由として交渉を拒否することはできません(東京地裁昭和63年7月27日判決労判524号23頁)。

使用者側

団体交渉は、双方が協議をして一定の合意を形成することを目的に行われるものであるため、団交事項について決定権を有する者、もしくは、決定権を有する者から委任を受けている者が出席する必要があります。

使用言語

組合から、使用言語を英語とした団体交渉の申し入れに対し、使用者が、使用言語を日本語とし、通訳者の手配は組合がすることを団体交渉に応じる条件とし、その条件に固執し団体交渉に応じなかったことが、正当の理由のない団体交渉拒否とされているため(東京都労委命令平成28年7月19日)、使用言語を外国語とした申し入れに対しては配慮が必要です。

 

当事務所でできること

団体交渉にあたっては事前準備が重要であり、準備不足のまま交渉に臨むと、不当労働行為と評価される可能性があります。また、どのような場合に不当労働行為に該当するか等の法律判断は難しく、法解釈が問題となることから、速やかに弁護士に相談していただくのが重要といえます。

当事務所では、団体交渉にあたっての事前準備についてのアドバイス業務や団体交渉に代理人として出席することも可能ですので、お気軽にご相談ください。

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