労働者派遣業

2020年4月1日施行 労働者派遣法改正の概要

1 改正労働者派遣法(以下、派遣法と言います。)が2020年4月1日から施行されます。重要な改正が含まれていますので、早めに確認し、対策が後手にならないように、対応して頂きたいと思います。

2 今回の派遣法の改正は、現在話題となっている「働き方改革」と密接な関連性があります。
「働き方改革実行計画」が2017年3月28日、安倍晋三内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」で決定されました。「働き方改革実行計画」には、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」等重要な計画が盛り込まれています。
働き方改革は、同一労働同一賃金の実現、非正規雇用の処遇改善、長時間労働の是正、衛生管理の強化などによって、賃金引き上げと労働生産性の向上を図ろうとしています。

2018年7月6日には、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が公布され、労働基準法や派遣法など8本の労働関係法が改正されることになりました。これらの法律の改正は、いずれも上記働き方改革の趣旨に則して行われていると言うことができます。

3 それでは、派遣法の主要な改正点について、見ていきましょう。

① 派遣先は派遣元事業主に対し、待遇に関する情報等の提供をしなければならない(第26条第7項から第11項まで)。

特に、派遣先は、労働者派遣契約の締結に当っては、あらかじめ、比較対象労働者(派遣先の通常の労働者)の賃金その他の待遇に関する情報等を提供する必要があります(同上第7項)。これらの情報提供を怠ると、労働者派遣契約の締結ができないことになります(同第9項)。

② 不合理な待遇の禁止等(第30条の3)。

この規定は、派遣元事業主に適用されるもので、基本給、賞与、その他の待遇について、職務の内容が派遣先の通常の労働者と同一である派遣労働者に対して、不合理と認められる相違や不利な待遇を設けてはならないとされているものです。

③ 勤務の内容等を勘案した賃金の決定(第30条の5関係)

この規定は、派遣元事業主に対して、派遣先の通常の労働者と派遣労働者の均衡を考慮して、賃金を決定するように努力義務を課しているものです。

④ 就業規則の作成の手続(第30条の6関係)

派遣元事業主は、派遣労働者に係わる就業規則の作成又は変更については、あらかじめ、派遣労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聞くように努めることが規定されています。

⑤ 待遇に関する事項等の説明義務(第31条の2第2項から第3項まで関係)

派遣元事業主は、派遣労働者を雇用するに際し、労働者に対し、賃金の額の見込額その他の待遇に関する事項について説明義務を負担します。また、同条2項以下に規定する労働条件については、文書の交付等をする必要があります。

⑥ 派遣先への通知(第35条第1項関係)

派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、派遣労働者の氏名等所定の事項を派遣先に通知する必要があります。

⑦ 派遣元管理台帳の作成(第37条1項関係)

派遣元事業主は、派遣就業に関し、派遣元管理台帳を作成し、派遣労働者ごとに所定の事項を記載する義務があります。

⑧ 適正な派遣就業の確保等(第40条第2項から第5項まで関係)

派遣先は、派遣労働者からの苦情の申出を受けたときは、苦情の内容を派遣元事業主に通知すること、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用の機会を与えること、適切な就業環境の維持、診療所等の施設の利用便宜を与えること、派遣元事業主の求めに応じて、派遣労働者の情報等を提供するなどの協力に配慮する義務があります。

⑨ 派遣先管理台帳の作成(第42条第1項関係)

派遣先は、派遣就業に関し、派遣先監理台帳を作成し、派遣労働者ごとに所定の事項を記載する義務があります。

⑩ 紛争の解決方法(第47条の4乃至第47条の9)

派遣労働者と派遣元事業者及び派遣先との紛争については、紛争の解決の援助、調停などについて規定されています。

⑪ 公表等(第49条の2関係)

労働者派遣の役務の提供を受ける者が、所定の派遣法に違反した場合、厚生労働大臣は必要な措置の勧告を行い、これに従わないときはその旨を公表することが規定されています。

以上、改正法の概略を示しましたが、派遣労働者の賃金、待遇等について、派遣先の労働者との不合理な相違や不利益が生じないように十分に配慮することが必要です。

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