雇用調整助成金の特例措置について

雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は,経済上の理由により事業活動を縮小し,雇用調整を行わざるを得ない事業主が,労働者に対して一時的に休業,教育訓練又は出向(「休業等」)を行って,雇用を維持した場合に,休業手当,賃金等の一部を助成するものです。

新型コロナウィルス感染症の影響に伴い特例措置が認められておりますので,近時の情勢により営業状況が厳しくなっている事業主の方々は,その申請を検討してみると支給を受けられる可能性があります。

ちなみに,助成金は,事業主に対して支払われるもので,労働者個人に支払われるものではありません。また,対象となる事業主は,雇用保険の適用事業主です。

 

どのような場合に対象となり得るか

まず,新型コロナウィルスに関する「経済上の理由」とは,例えば,観光客のキャンセルによる売上げ減少,市民活動自粛(外出などの行動を自粛することが含まれると思われます)による売上げ減少,営業自粛要請による売上げ減少などが想定されます。また,従業員に新型コロナウィルスの感染者が出た場合,拡大防止のために事業主が自主的に休業等を行った場合などにも,助成金の対象となります(ただし,患者本人の休業手当は対象外です)。

具体的には,売上高又は生産量などの事業活動を示す指標が,1か月間について前年の同じ月に比べ5%以上減少していることが要件となります。ちなみに,助成金の要件として通常設定されているのは,3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していることですが,これが特例措置によって緩和されている次第です。

なお,助成金の対象となる休業とは,所定労働日に従業員である労働者を休ませることですが(全日にわたる休業のほか,短時間の休業も対象になります),休業手当の額が,平均賃金の60%を下回っていた場合は,助成金は支給されません。また,休業は,労使間の協定により実施されるものでなければなりません。

 

助成額はどのくらいか

雇用調整助成金の休業手当についての助成率は,通常,中小企業3分の2,大企業2分の1ですが,特例措置により,中小企業5分の4,大企業4分の3に拡大されています(なお,更に,解雇等を行わず雇用維持を行う場合,中小企業10分の10,大企業4分の3です)。また,日額上限額も,通常,8330円ですが,特例措置により,1万5000円に拡大されています(1人あたりの上限です)。

そして,支給限度日数は,通常,1年間で100日,3年間で150日ですが,特製措置により,これら日数に,令和2年4月1日から9月30日までの間に実施した休業の日数が加えられます。

 

どのような手続が必要か

手続のおおまかな流れは,次のとおりです。すなわち,まずは,休業の具体的な内容を計画し,休業についての労使協定書を締結します。次に,この協定に基づき,休業を実施し,休業手当を支払います。そして,その実績に基づいて,必要書類を揃えて支給申請をする,という流れになります。

主な必要書類は,雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書(比較する前年と本年の売上高等を確認できる書類を添付します),支給要件確認申立書・役員等一覧,休業・教育訓練実績一覧表,助成額算定所,支給申請書です。そのほか確認書類として,事業所の状況に関する書類,休業協定書,労働・休日の実績に関する書類,休業手当・賃金の実績に関する書類なども必要です。

 

専門家のサポート

以上,雇用調整助成金の特例措置を中心に,その内容と手続きの概要をご案内させていただきました。あくまでも概要ですので,詳細は,関係行政庁のWebサイトなどをご参照下さい。もっとも,Webサイトをみるだけでは分かりにくい点もあるかと思います。必要であれば,弊所でもその申請のサポートが可能ですので,ご相談下さい。

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