待機時間は労働時間にあたるか

Q 次の作業までの間、従業員を待機させた場合、その時間を休憩時間として扱うことはできますか?

A  「午後○時○分まで」などと一定の休憩時間を確保し、それまでの時間を従業員が自由に使うことができる場合でなければ、その時間は労働時間となり、休憩時間とは認められない可能性が高いです。

 

【解説】

1 労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを指し(最1小判平成12年3月9日)、たとえば、待機時間(手待ち時間)のように、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならず、そのような作業場の指揮監督下に置かれた時間は労働時間となります。

 

2 以下の時間の中には、裁判例等で、休憩時間ではなく労働時間とされたものがあります。

・タクシー運転手がタクシーに乗車して客待ち待機をしている時間

(大分地判平23・11・30労判1043号54頁)。

・貨物取扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物の積込、積卸のために待機している時間(昭和33.10.11基収6286号)

・住込み管理員の不活動時間

(東京高判平16・11・24労判852号26頁)。

 

3 では、会社としては、待機時間(労働時間)と休憩時間を区別するため、休憩時間の与え方についてどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。

 

産科医が業務に従事していない時間が手待ち時間を含む労働時間にあたるか、

休憩時間にあたるかが争われた東京地判平成29年6月30日労判1166号23頁では、以下のとおり述べています。

 

判例

使用者が当座従事すべき業務がないときに労働者に休息を指示し、又は労働者の判断で休息をとることを許していても、休息の時間を「午後○時○分まで」「○分間」などと確定的に定めたり、一定の時間数の範囲で労働者の裁量に任せたりする趣旨でなく、一定の休息時間が確保される保障のない中で「別途指示するまで」「新たな仕事の必要が生じる時まで」という趣旨で定めていたに過ぎないときは、結果的に休息できた時間が相当の時間数に及んでも、当該時間に労働から離れることが保障されていたとはいえないから、あくまで手待時間であって、休憩時間に当たるとはいえないというべきである。

 

そのため、会社としては、従業員に休憩時間を与える際には、休憩時間を「午後○時○分まで」「○分間」などと確定的に定めることをおすすめします。

 

【当事務所ができること】

このように、労働時間にあたるかどうかは、様々な事情を考慮して判断されるため、専門的な知識が必要となります。

また、会社としては休憩時間と考えていた時間が全て労働時間とみなされてしまった場合、その分の賃金を支払う必要があるうえ、法定時間外労働については時間外割増賃金も支払うこととなり(場合によっては付加金を支払う必要があります。)、会社には大きなコストが発生することになります。

そのため、労働時間にあたるかどうかについては事前に専門家に相談することが望ましいといえます。当事務所では、労務に関する十分な知識を有していますので、悩まれた際にはご相談ください。

 

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