中小企業協同組合・組合員の義務と責任

組合員の義務

組合員は、団体協約遵守義務(中協法9条の2第1項6号)、出資義務(中協法10条1項)、経費負担義務(中協法12条1項)、使用料及び手数料負担義務(中協法13条)、損失額払込義務(中協法20条3項)、総会決議・定款遵守義務などを負います。

 団体協約遵守義務(中協法9条の2第1項6号)

事業協同組合は、組合員の経済的地位の改善のため、団体協約を締結することができます。そして、この団体協約は、直接組合員に対して効力を生じ(中協法9条の2第14項)、また、団体協約に反する基準による契約を組合員が締結した場合、当該基準に違反する契約の部分は、その基準によって契約したものとみなされます(中協法9条の2第15項)。

団体協約は、組合と相手方との間で結ばれる契約であり、組合員が契約の相手方から自己に不利益な内容の契約を締結させられるのを一定程度防止することができます。例えば、小売業者の組合が卸売業者と価格などの取引条件について締結するものがあります。

 出資義務(中協法10条1項)

組合員は、出資一口以上を有しなければなりません。そして、出資一口の金額は均一でなければなりません(中協法10条2項)。また、組合員ひとりにつき、最大で25%の出資比率までが許されています(中協法10条3項)。この出資口数の制限は、組合員間の平等原則を維持するための規定です。

 経費負担義務(中協法12条1項)

組合は、定款に定めることにより組合員に経費を賦課することができます。この定款の定めは絶対的記載事項であること(中協法33条1項8号)と、また、経費の賦課及び徴収の方法については、総会での決議が必要であること(中協法51条1項5号)には注意が必要です。

 使用料及び手数料負担義務(中協法13条)

組合は、定款に定めることにより組合員から使用料及び手数料を徴取することができます。⑶の経費は組合員全員に広く負担を求めるものである一方で、使用料及び手数料は、組合の設備を利用したり、組合から役務の提供を受けたりした個別の組合員が組合に対して支払うものです。

 損失額払込義務(中協法20条3項)

この損失額払込義務は、組合からの脱退者に課されるものです。⑵でみたように、組合員は有限責任しか負わないため、ここでいう払込義務というのは、⑵の出資額を限度とするものです。つまり、この義務は、組合に損失が発生した際に、脱退した組合員に未払いの出資義務がある場合に発生するものです。

 総会決議・定款遵守義務

総会決議や定款を遵守すべきと中協法が定めているわけではありません。しかし、組合は組合員の自治組織であり、組合員は、組合の総意として決定された事項を遵守する必要があります。

 組合の事業の利用義務(中協法19条2項1号)

中協法19条2項1号は、長期間にわたって組合の事業を利用しない組合員を総会の決議によって除名することができると定めているため、組合員は組合事業の利用をする必要があります。そもそも組合は、組合員が共同して事業を行うために作られるものであり(中協法1条)、事業を利用しない組合員を組合に入れておく必要はないためです。

組合員の責任

組合員の責任は、その出資額を限度とします(中協法10条5項)。これは、株式会社における株主と同じであり、株主が会社債権者に対して直接責任を負わないのと同様に、組合員が組合債権者に対して直接責任を負うものではありません。

組合は、法人であり(中協法4条1項)、組合の名において対外的な活動をします。そうすると様々な活動を通じて、組合が組合員の出資金額を超えて損失を出す可能性もあります。そこで、組合が、出資金額を超えて、組合員に一定の義務負担を課すことができるかが問題になります。

農業組合法人の事案ですが、最高裁は、組合員有限責任の原則により、組合員の出資額を超えて責任を課すことは、組合員全員の同意があってもできないが、一方で、具体的に確定した債務について、組合員総会において組合員全一致の決議があるのであれば、出資額を超えた義務を課すことができるとしています(最高裁昭和52年12月19日)。

また、水産加工業協同組合の事案において、組合が出資額を超えて経費を徴収することは、組合の損失補填のためであっても、組合員有限責任の原則に反し、負担に同意しない組合員から金員を徴収することはできないとしました(最高裁平成4年3月3日)。

このように、最高裁の判示からすれば、たとえ組合員の全員一致があっても、出資金を増額させるようなことはできないが、組合員の全員一致により、特定の債務に対して出資金額を超える負担を組合員に求めることはできるといえます。

 

このように組合員に一定の義務を課したり、責任を負わせたりすることはできますが、制限がありますので、組合員に負担を求める際には、まずは、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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