管理職と残業代請求-管理監督者とは

【質問】

管理職には、残業代を支払わなければならないでしょうか。

 

【解説】

労働基準法上の管理監督者にあたる場合には、労働時間・休憩・休日の規定は適用されませんので、残業代の支払いは必要ありません(労働基準法41条2号)。
そのため、管理職が、以下の基準により管理監督者にあたるかどうかによって、残業代の支払いが必要かどうか異なってきます。

管理監督者の判断基準

東京地判平成20年9月30日労判977号74頁では、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、以下の要件を満たすことが必要とであるとしています。

①職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること

②部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること

③管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること

④自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、

 

①職務内容

日本マクドナルド事件(東京地判平成20年1月28日労判953号10頁)では、店長は、「店長の職務、権限は店舗内の事項に限られる」とし、経営者との一体的な立場の重要な職務と権限を付与されていないことを考慮し、管理監督者性が否定されました。

 

②労務管理上の決定権

一般従業員に対する労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にあるかが考慮されます。

大阪地判昭和62年3月31日労判497号65頁では、看護師の採否の決定、配置を決定する人事上の権限まで与えられていた人事第二課長について、管理監督者性を肯定しました。

 

③地位にふさわしい待遇

店長の管理監督者性が問題となった事案において、C評価の店長(全体の約1割)が下位の職位の平均年収よりも低額であり、B評価の店長(全体の約4割)の平均年収も約44万円の差であることから、地位にふさわしい処遇ではないとされました(東京地判平成20年1月28日労判953号10頁)。

 

④労働時間の裁量性

管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請されることがあり、労務管理においても一般従業員と異なる立場に立つ必要があります。そのため、労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者性を否定する要素となります。

一般従業員と同様に勤務時間を管理され、自由裁量に委ねられていなかった事案では、管理監督者性が否定されました(東京地判平成14年3月28日)。

 

当事務所ができること

管理監督者性が否定された場合には、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払いが必要になり、場合によっては、今まで支払った管理職手当が時間外労働手当の一部とみなされないこともあり、企業においては多額の負担を強いられることとなります。

企業においては、このような負担を課せられないよう、事前に管理監督者性について検討しておくことが重要といえます。そして、上述のとおり、管理監督者にあたるかどうかは事案ごとに判断されるため、専門家に相談されることをおすすめします。当事務所では、労務問題を専門的に扱っておりますので、悩まれた際にはご相談ください。

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