内定取消しについて

採用内定の法的性質

採用内定には、新卒採用や中途採用など様々な場合がありますが、新卒の一括採用で、企業から採用希望者の大学生に対し採用内定通知等が出され、それに対し学生から誓約書が提出されて採用が内定した場合には、始期付解約権留保付の労働契約が成立したものと解されるのが一般的です(ただし、採用内定制度の実態は様々な場合があり、一概には言えません)。採用内定によって解約権が留保された労働契約は成立しているものの、実際に就労するのが卒業後の4月からとなるため、始期付ということになります。

 

内定取消しが許される場合

判例では、内定取消しが許される場合とは、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができる場合」に限られるとされています。

 

業績悪化による内定取消し

採用内定者は他の企業に就職することができない地位に置かれているので、企業側が経営不振等を理由に内定取消しをすることができるのは、整理解雇の4要素(①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③人選の妥当性、④手続の妥当性)と呼ばれる要素を考慮して、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認される場合に限られます。

 

入社前研修不参加を理由とする内定取消し

入社前研修への参加を拒む学生や、参加に同意したものの学業に支障が出ることを理由に入社前研修への参加をやめたいと申し出てきた学生に対して、内定取消しをすることは難しいと考えるのが一般的です(ただし、採用内定制度の実態や研修の内容・目的、必要性、参加を拒否した理由などにより一概には言えません)。

というのも、企業は、内定者の生活の本拠が学生生活等労働関係以外の場所に存している以上これを尊重し、本来入社以後に行われるべき研修等により学業等を阻害してはならないと考えられます。そのため、入社前研修の参加に同意しなかった学生に対し内定取消しなどの不利益取扱いをすることは許されず、また、入社前研修の参加に同意した者が、学業などへの支障などといった合理的な理由に基づき入社前研修への参加を取りやめたい旨を申し出た場合にも、これを免除すべき義務を負っていると考えられるからです。

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