第33号 平成29年08月01日

暑い日が続いておりますが、お健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。弁護士法人中村綜合法律事務所メールマガジン8月号<第33号>を配信いたしますので、ご一読いただければ幸いです(2017.8.1 弁護士 中村雅男)。

 

□ 目 次 □

1.民法の約120年ぶりの大改正について~消滅時効~

2. 事務所セミナーのご報告とご案内

3. コーヒーブレイク~弁護士の血液型

 

1.法律コラム~民法の約120年ぶりの大改正について~消滅時効~

今回のコラムでは、前回のメルマガで予告しました民法の改正ポイントのうち、我々の社会生活においても影響が生じうる消滅時効制度の改正についてご紹介いたします。

【現在の民法】

消滅時効とは、ある権利を行使できるのに行使せずに一定の期間が経過した場合に、その権利が消滅してしまう(権利行使を法的に強制できなくなってしまう)という制度です。

現在の民法では、一般的な債権(例えば、友人にお金を貸したときに貸したお金の返還を請求する権利)の消滅時効期間は「権利を行使できるときから10年間」とされております。

ただし、特定の職業については、その業務により発生する債権の消滅時効期間が短くされています。例えば、医師の診療報酬請求権については、2年間で消滅時効期間が経過することになります。

【改正後の民法】

これに対して、改正後の民法では、一般的な債権の消滅時効期間については「権利を行使できることを知ったときから5年間」あるいは「債権を行使できるときから10年間」のどちらか早いほうとされ、また、職業別の短期の消滅時効などは廃止されました。

この改正により、例えば、私が友人にお金を貸して、貸した日の1ヶ月後を返還期限とするという約束をした場合、私は貸したお金を1ヶ月後に返してもらえることを知っていますから、その貸金返還請求権については、返還期限から5年間を経過した時に消滅時効期間が経過することになります(改正前の民法では返還期限から10年間を経過した時に消滅時効期間が経過することになりますので、この具体例では消滅時効期間が短縮されたことになります。)。

また、先に挙げた具体例の医師の診療報酬債権については、代金を請求できるようになったことを知った時から5年間を経過した時か、代金を請求できるようになった時から10年間を経過したときのいずれか早いときに消滅時効期間を経過したことになります(この具体例では消滅時効期間が延びたことになります。)。

【改正民法が適用されるか否かについて】

このように改正前後で消滅時効の制度が大きく変わってしまうため、改正前後のどちらの民法が適用されるのかは気になるところです。この点については、消滅時効期間の経過措置として、改正民法の附則10条4項は「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による」と定めています。つまり、先の具体例でいえば、改正民法の施行前にお金を貸したのか、施行後にお金を貸したのかによって、消滅時効期間が異なることになります(いつお金を貸す契約自体をしたのか(契約締結時期)によって結論が異なるのであって、いつ返してもらうことにしていたのか(支払時期)によって結論が異なるわけではありません。)。

なお、改正民法は2017年(平成29年)6月2日に公布されており、改正民法の施行時期については公布から3年を超えない範囲内の日に施行されることとされておりますので、現時点では改正民法は2020年6月頃までには施行される予定です。

【一般商事債権について】

一般商事債権の消滅時効期間については、現行商法522条では「権利行使可能な時から5年」とされています。

これに対して、改正民法では、一般商事債権の消滅時効期間についても、上述した一般的な債権と同様に「権利行使が可能だと知ったときから5年」(又は権利行使可能な時から10年間の早いほう)とされ、商法522条は削除されます。

ただ、通常、会社などの債権者は、弁済期が到来すれば権利行使が可能だと知っているので、一般商事債権についても結局弁済期から5年で消滅時効が完成するため、民法改正前と結論に違いが出ないことが多いことになります。

【消滅時効期間が変わらないもの】

今回の改正によっても、労働者が会社などに対して有する賃金債権の消滅時効期間は「権利を行使できる時から2年間」のままであり、現時点では、民法改正の影響を受けないことにも注意が必要です。

ただし、賃金債権の消滅時効期間についても変更をするか否かの検討が厚生労働省では行われているようですので、今後の検討状況には注目する必要があります。

※個人情報保護法についての法律コラムは、今号はお休みさせていただきます。

 

2.事務所セミナーのご報告とご案内

7月21日(金)、当事務所において顧問先企業様を対象に「雇用ルールを守るための非正規労働者対応」をテーマにセミナーを開催いたしました。

セミナーでは当事務所所属の榎本久司弁護士が、いわゆる無期転換ルール及び無期転換ルールに対応するための就業規則の見直し・整備等について、実務でポイントとなる点を指摘しつつ、ご説明しました。

無期転換ルールとは、労働契約法の改正により平成25年4月から導入された制度で、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときには、労働者の申込みにより使用者は有期労働契約を無期労働契約に転換しなければならない、というものです。企業経営及び人事・労務管理に大きな影響を与える新しいルールということで、参加者の皆様は熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

当事務所では9月、11月にも労働問題をテーマにセミナーを予定しており、労働問題に精通した榎本弁護士が、企業経営上特に重要な問題について丁寧かつ分かりやすい説明をいたします。

このセミナーは主に当事務所の顧問先企業様向けの企画ではありますが、メルマガ読者の皆様にも特別にご案内をしております。参加をご希望の方は電話(03-3511-5611)、または、お名前、ご住所、電話番号、参加希望回を明記の上、FAX(03-3511-5612)にてお申し込み下さい。

労働問題にご興味をお持ちの方はもちろん、人事・労務関係のお仕事に従事している方にもご満足いただける内容と自負しております。どうぞ奮ってご参加下さい。

 

【今後の日程とセミナーのテーマ】

2017年9月22日(金)「退職・解雇トラブルの解決方法と予防策」

2017年11月10日(金)「人財定着を促進するための長時間労働対応」

【時間】

各回とも18時~20時(20時より、自由参加の懇親会を実施いたします。)

【場所】

弁護士法人中村綜合法律事務所

【参加費】

1回につき2000円(懇親会費別途3000円)

 

3.コーヒーブレイク~弁護士の血液型

性格占いや相性占いでもおなじみの血液型ですが、日本人の血液型分布をみるとA型が最も多く(約38%)、次いでO型(約31%)、B型(約22%)、AB型(約9%)、となっています。

しかし、日本の弁護士業界ではこの血液型分布は当てはまらないようで、弁護士に最も多い血液型はB型、と言われています(特に公式の統計があるわけではありませんが・・・。)。

そこで当事務所所属の弁護士15名の血液型を調べてみたところ、A型3名、O型5名、B型5名、AB型2名という結果となり、少なくとも当事務所の弁護士については、日本人の血液型分布以上にB型が多い、ということが分かりました。

とはいえ、当事務所のB型の弁護士を見ると、「皆本当に同じB型?」と思うくらいそれぞれが個性豊かで、得意分野も異なります。それはB型以外の血液型の弁護士についても同様です。

このように、血液型の枠など軽々と超えて個性豊かな弁護士が在籍していることこそが、当事務所の強みのひとつであると密かに自負しております。

 

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