第40号 平成30年03月01日

向春の候、皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
中村綜合法律事務所メールマガジン3月号(第40号)を配信いたしますので、ご一読いただければ幸いです(2018.3.1弁護士 中村雅男)。

□ 目 次 □

1.法律コラム~民法の120年ぶりの大改正について~定型約款について~
2.裁判傍聴のすすめ~その③
3.CD/DVDのご紹介

 

1.民法の約120年ぶりの大改正について~定型約款について~

今回のコラムでは、民法の改正ポイントのうち、定型約款制度の新設についてご紹介いたします

1 約款について

いわゆる約款については、これまで、民法には規定されていませんでした。
もっとも、現実には、我々もいわゆる約款に基づいて日常的に取引を行っています。例えば、電車やバスを利用する場合、クレジットカードに入会する場合、ソフトウエアの利用許諾を受ける場合、インターネットなどにおけるサービスの提供を受ける場合などは、約款に基づく取引を行うケースの典型的なものです。
このような約款による取引は、契約内容について個別の合意がなくても契約内容について合意したことになるため、大量の契約締結作業を迅速かつ簡便に行うことができるなどのメリットがあります。

2 改正後の民法における定型約款について

この度の民法改正においては、これらの取引に用いる約款について、新たに規定を設けることになりました。
具体的には、定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体を定型約款とし、ここでいう「定型取引」とは、特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものであるとされました。
この定義だけを読んでもなかなか理解しにくいのですが、定型約款にあたるかどうかを判断するポイントとして、「不特定多数の者」を相手方とするかどうか、「画一的な取引」かどうか、という点があります。
例えば、ある人が会社に雇われる場合のような労働契約については、労働者の個性に着目して行われる契約なので「不特定多数の者」を相手方として行う取引ではないとして、定型約款による取引とはなりません。
また、不動産の賃貸借契約なども、賃貸目的物は異なることが多いでしょうから「画一的な取引」にはなりにくく、定型約款による取引にはならないことが多いでしょう。
3 定型約款の特徴など
ある取引が定型約款によるものとされた場合、定型約款を準備した者(例えば、鉄道会社などです。)があらかじめその定型約款を契約の内容とすることを相手方(例えば、鉄道の乗客などです。)に表示していた場合には、個別の合意がなくても、定型約款に記載された契約内容について、合意が成立したものとみなされます。
もっとも、ある約款が民法上の定型約款に該当するとしても、例えば「○○株式会社は本件取引において一切の法的責任を負わない」というような事業者の免責を著しく認める条項などについては、合意しなかったものとみなすという救済規定が設けられており、これにより利用者の保護が図られています。

 

2.裁判傍聴のすすめ~その②

刑事裁判の手続(「公判手続」といいます。)は、冒頭手続→証拠調べ手続→検察官の論告・求刑→弁護人・被告人の最終弁論→判決、の順に進んでいきます。
今月号からは、先月ご紹介した「冒頭手続」に続いて行われる「証拠調べ手続」について、何回かに分けてご説明いたします。
刑事裁判では、被告人が本当に犯人なのか、また、犯人だとしても本当に検察官が起訴したとおりの犯罪を行ったのかどうかを、検察官、被告人・弁護人それぞれが提出する証拠によって確定していきます。「証拠調べ手続」とは、文字どおり、裁判所が証拠を取り調べて、事件についての心証を形成していく手続をいいます。
今回はまず、刑事裁判で提出される証拠の種類及びその証拠調べの方法についてご紹介いたします。
①物証(証拠物):「物」そのものの存在や状態が証拠となるものです。例えば、殺人事件におけるナイフなどの凶器、薬物犯罪における薬物や吸引器具、窃盗事件における被害品などがこれにあたります。証拠調べの方法は「展示」といい、証拠調べ請求をした側が法廷で実際にその物を示し、裁判官と相手方がこれを確認します。
②人証(証人等):人の供述内容を証拠とするもので、証人がこれにあたります。証拠調べの方法は「証人尋問」といい、法廷で検察官、弁護人、裁判官が事件について質問をします。なお、黙秘権が認められる被告人と異なり、証人は原則として証言を拒むことはできず、証言前に宣誓をしなければなりません。また、証人が故意に記憶と異なる証言をすると、偽証罪に問われることもあります。
 ③書証(証拠書類):その記載内容が証拠となる書面をいいます。例えば、供述調書、日記、鑑定書などがこれにあたります。証拠調べの方法は 原則として書面の内容を読み上げる「朗読」ですが、当事者の意見を聴いた上で、朗読に代えてその要旨を告げる(要旨の告知)こともあります。
次回は、証拠調べ手続の実際の流れについてご説明いたします。

 

3.CD/DVDのご紹介

このたび、税理士法人レガシィ様のグループ会社である株式会社レガシィ様の企画・制作・販売によるCD/DVD「遺留分を減らすための提案と実行上の留意点」(定価:CD5400円、DVD8100円。いずれも税込)にて、当弁護士法人の代表社員弁護士である中村雅男が講師をつとめさせていただきました。
「遺留分」とは、民法上、法定相続人に留保された、遺言によっても奪うことのできない相続財産に対する権利をいいます。
例えば、死亡した人(「被相続人」といいます。)の法定相続人が妻と子1人の計2人である場合、それぞれの法定相続分は妻1/2、子1/2になりますが、被相続人が法定相続分とは異なり、「妻に全財産を相続させる(=子に財産は相続させない)。」という遺言を残していたとします。しかし、このような遺言がある場合でも、民法の「遺留分」の規定に従い、子には本来の法定相続分1/2の1/2、すなわち相続財産に対して1/4の遺留分が認められます。つまり、子に財産を相続させない、という被相続人の遺言があるにもかかわらず、子は相続財産の1/4は自分が取得できる、と主張できるのです。
もっとも、他の相続人とのバランスをとる必要がある、その相続人とは長年不仲で絶縁状態である等、各ご家庭の様々な事情により、特定の相続人の遺留分を減らしたい、というご相談を弁護士が受けることがあります。
DVD「遺留分を減らすための提案と実行上の留意点」では、長年相続実務に携わってきた中村が、どうすれば遺言者の希望に沿って遺留分をコントロールできるのか、遺留分対策のポイントを分かりやすく解説しております。
ご興味のある方は、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

【お問い合わせ先】

株式会社レガシィお客様専用電話:0120-00-8377
メール:customer@legacy.ne.jp
※「麹町グルメのご紹介」は、今月号はお休みとさせていただきます。

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