第44号 平成30年07月02日

梅雨明けが待ち遠しい季節となりました。皆様におかれましては、益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
中村綜合法律事務所メールマガジン7月号(第44号)を配信いたしますので、ご一読いただければ幸いです(2018.7.2 弁護士 中村雅男)。

□ 目 次 □

1.法律コラム~同一労働同一賃金
2.ある弁護士のドタバタした一日
3.民泊専門ウェブサイト開設のお知らせ

 

1.同一労働同一賃金

先月に続いて、労働法の分野からです。
先日(平成30年6月1日)、2つの注目すべき最高裁判決が下されました。どちらも、有期労働契約社員であるドライバーが、業務内容の点において正社員と差異がないにもかかわらず、正社員と賃金等において差異が設けられていることについて、労働契約法20条等に違反するとして争ったものです。
労働契約法20条は、有期労働契約における労働条件が、期間の定めがあることにより無期労働契約における労働条件と相違する場合には、①業務の内容や責任の程度、②職務の内容や配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないと規定されており、いわゆる「同一労働同一賃金」の原則を定めたものと言われています。

【ハマキョウレックス事件】

大手物流会社で有期労働契約社員として採用され、ドライバーとして働いていた従業員が、会社を相手取り、無期雇用契約社員と同一の地位にあることの確認と、賃金の差額や各種手当等の支給を求めた事案です。
第一審(大津地裁彦根支部)は、無期契約社員と同一の地位にあるとは認められないとしつつ、本件における通勤手当の格差については、会社の経営・人事制度上の施策として不合理なものであり、労働契約法20条に違反し、不法行為が成立するとしました。
第二審では、基本的には第一審と同様の判断枠組みに立ちましたが、通勤手当以外にも、無事故手当、作業手当、給食手当等を不支給とすることは不合理であるとして労働契約法20条に違反すると判示し、第一審判決を一部変更しました。これに対しては、会社と労働者の双方から上告がなされました。
最高裁も、基本的には第一審、第二審と同様の判断枠組みに立ち、第二審で労働契約法20条違反を認めた各手当に加え、皆勤手当に係る相違は不合理であるとしました。
第一審、第二審、最高裁と、ほぼ同じような判断枠組みにたちながら、結論に差異が生じた理由は、正社員が、就業場所及び業務内容の変更を甘受しなければならないことや、将来において会社の中核を担う人材として育成されることをどこまで重く見るかという点にあったように思われます。

【長澤運輸事件】

こちらも、従業員ドライバーが、会社を相手取って、労働条件の相違が不合理であり労働契約法20条に違反するとして争った事件ですが、この従業員ドライバーが、定年退職後に嘱託社員として再雇用された者である点がハマキョウレックス事件と異なっています。つまり、定年前は無期労働契約社員として給与の支払を受けていた者が、定年を期に賃金を切り下げられた(約2割カット)ことの不合理性が問われた事案でした。
会社側は、嘱託社員の労働条件は、定年後再雇用であることを理由に正社員との間で労働条件の相違を設けているのであり、期間の定めがあることを理由として労働条件の相違を設けているわけではないから労働契約法20条の適用はないという主張もしていましたが、これについては第一審から最高裁まで一貫して否定されており、労働契約20条の問題であるとされました。
その上で、第一審は、労働契約法20条が不合理性判断の要素として職務の内容(①)や配置の変更の範囲(②)を挙げているのであるから、これらが同一であるにもかかわらず、賃金の額について相違を設けることは、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れないとしました。
そして、定年到達者の雇用を確保するために賃金を引き下げること自体には合理性が認められるとしながらも、会社に賃金コスト圧縮の必要性があったわけでもない状況で定年後再雇用制度を賃金コスト圧縮の手段として用いることが正当であると解することはできないとして、従業員の請求を全面的に認めました。
これに対し、第二審は、労働契約法20条が、上記①②に加え、その他の事情(③)を掲げた上で、考慮すべき事情について特段の制限を設けていないから、労働条件の相違が不合理であるか否かについては、諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきであるとしました。そして、a)会社が雇用確保措置として選択した嘱託社員としての継続雇用は社会一般で広く行われているものであり、その場合に賃金が引き下げられるのが通例であること、b)運輸業では、継続雇用制度を採用して定年前と同じ業務に従事させながら、定年前に比べて賃金を引き下げることが多いこと、c)運輸業については収支が大幅な赤字となっていること、d)会社が賃金格差を縮める努力をしたこと、e)会社が、組合との団体交渉の過程を経て労働条件の改善を実施してきたことが認められるとして、労働条件の相違が不合理なものであるということはできず、労働契約法20条に違反しないとしました。
最高裁は、上記ハマキョウレックス事件の判旨を引用し、労働契約法20条の規定は、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解されるとした上で、労働者の賃金が複数の賃金項目から構成されている場合、賃金項目ごとに趣旨を異にするものであるから、不合理性の判断に当たっては、考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得るとして、賃金の総額を比較することのみによるのではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきであるとしました。
そして、精勤手当と超勤手当(時間外手当)の格差は労働契約法20条に反するが、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与の格差については同条に反しないとしました。
両最高裁判決によって、労働契約法20条は、「職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定」であり、その不合理性判断に当たっては、賃金項目ごとにその趣旨を勘案して不合理性を判断するという枠組みは固まったものと思われます。
また、その不合理性判断に当たっては、職務の内容等だけでなく、社会の様々な事情を判断材料とすべきことも認められたといえます。
有期契約労働者と無期契約労働者の賃金をどのように設定すれば労働契約法20条に違反しないかについては、その判断が難しくなったといえますが、他方、会社側が種々の事情を考慮して賃金を設定したという努力は評価される傾向にあると思われますので、賃金体系について、今一度、見直してみるのもよいのではないでしょうか。

 

2. ある弁護士のドタバタした一日

突然ですが、弁護士は普段どんな一日をすごしているのでしょうか。
皆様の見ていないところでも、ちゃんとお客様のために東奔西走しているのです。
当事務所のある若手弁護士の一日の様子を、本人のコメントを交えて皆様にご紹介いたします。
08:30 起床。
しつこい携帯アラームに降参して起床するも、朝は苦手。早起きしてカフェで
優雅にモーニングを、というのは自分には無理だな。今日は刑事の公判もある
し、気合の入ったスーツにしよう。
09:30 出所。いつも元気に挨拶を、たとえ二日酔いで声がガラガラで
も。そして、すぐに裁判所へ出発。午前は、10時、10時半、11時半の民
事3件だ。
10:00 弁論期日(民事裁判の期日)に出頭。なかなかうまくいったし、
お客様に有利な和解もできた。内心ニヤリとする。
10:45 待ち時間に裁判所の待合室でメールチェック。即返信したいが、
資料が手元にない。後で返信しなきゃな。
11:40 3件目の裁判を終えて事務所に戻る。今日はハードだから、お昼
はスタミナ弁当だ!ああ、たまには優雅にランチしたい。パスタとか食べた
い。
12:00 昼食を掻っ込み、たまった電話、メールの応答に追われる。
13:00 法律相談のお客様がお越しになる。ご依頼いただけた!
14:00 今日の刑事の公判の最終準備。
14:40 裁判所へ行き、地下で被告人と今日の公判の最終打ち合わせ。さ
すがに神妙な顔をしていたので、元気づけようとする。
15:50 刑事の公判終了。傍聴人が多く緊張し、被告人質問で3回ほど盛
大に噛んだが、無事終わった。被告人の反省を示せてよかったかな。
17:30 顧問先から、急ぎの質問の電話がかかってくる。ちょうど先日の
講演で検討した事案に似ていたため、サクッと回答でき、感謝された。
18:00 来週が締め切りの準備書面にとりかかる。大がかりな事件で資料
が多いので、会議室に資料を広げながら構成を練る。証拠を広げていると、い
ろいろなことが見えてくるな。いいことも、知りたくなかったことも。
20:00 書面作成が煮詰まってきたので、気分転換に夕飯を食べに行く。店への道中、友人から、「今から飲みに来いよ」との連絡が。今行くと明日以降の仕事がつらくなるので、泣く泣くお断りし、チェーン店で牛丼。
24:00 準備書面作成がひと段落。あいかわらず、文章が長いな、自分。
明日の空き時間に推敲しよう。片付け後帰宅。
26:00 入浴後はリラックスタイム。ずっとリラックスしていたいけど、
明日も仕事だ。携帯のアラームをかけて、就寝。頑張れ、アラーム。

今日はバタバタした日だった。ほかの弁護士はもっと華麗なる生活を送っているのかなあ。でも、期日はうまくいったし、新しい事件も受任したし、起案も進んだ。総合的にはいい日だったかな。明日も頑張ろっと!

 

3.民泊専門ウェブサイト開設のお知らせ

観光立国を推進し、急増する訪日外国人観光客の宿泊需要に対応するため、住宅の空き部屋を宿泊施設として提供する民泊に注目が集まっています。
そこで、当事務所では民泊を運営する上での注意点やトラブル対応、民泊に関する最新情報、関連法令等についてわかりやすく解説した民泊専門ウェブサイトを立ち上げました。
また、当事務所では民泊の運営やトラブル対応について、民泊に関する専門知識を有する弁護士による法律相談も承っております。
こちらもぜひお気軽にご利用ください。
↓中村綜合法律事務所 民泊専門サイトはこちら↓
http://minpaku-n-law.jp/#

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